マンションを売却したときの税金の有無と利用できる各種特例について

税法は時代の背景と共に変化します。
マンションを売却した時の税金についても、不動産が値上がりし続けたバブル時代を経てバブル崩壊後に至るまで、時代の変遷を受け、様々な特例が登場してきました。
制度そのものは存在していても、今の時代には馴染まない特例も多く残っています。

バブル崩壊後、マンションなどの居住用不動産は、時間と共に価値が下がることが当たり前となってきました。
そこで今回の記事では、今の時代背景に合致したマンションを売却した時の税金についてご紹介いたします。

マンションの売却で税金の発生する可能性

1.譲渡所得の定義

個人の方が不動産を売却した場合、譲渡益が発生すると、所得税が生じます。
譲渡益が発生した場合に、所得税が発生する制度はバブル時代からあり、今でも残っています。そのため現在でも不動産を売却しても、所得税が発生する「可能性」があります。

ここでなぜ、「可能性」なのかというと、マンションを売却した時の譲渡所得については、以下の計算式で表されるからです。

譲渡所得 = 譲渡価格 - 取得費 - 譲渡費用

譲渡所得がプラスであれば、所得税は発生し、譲渡所得がマイナスであれば、所得税は発生しません。そこが不動産を購入した時に必ず発生する不動産取得税とは大きく異なる点です。

不動産取得税は、固定資産税評価額に対して一定の税率がかかるため、必ず発生します。一方で、譲渡時の所得税は譲渡所得がプラスかマイナスかで、発生するかしないかが変わってくるのです。

2. 取得費イコール購入価格ではない

ここで、譲渡価格とはマンションを売却した時の売却額となります。
譲渡費用とはマンションを売却した時に発生する仲介手数料や印紙税が該当します。また取得費については、マンションの購入価格と言いたいところですが、取得費イコール購入価格ではありません。

譲渡所得を計算するための取得費は建物の減価償却費を控除した金額です。
取得費が購入価格であれば、今時のマンションは譲渡価格が購入価格よりも低いことは多いため、ほとんどの方が譲渡所得はマイナスであると単純に言えます。ところが、取得費は建物購入価格から減価償却費を控除した金額であるため、少し計算をする必要はあります。

そこで、次にマンションの取得費の計算方法について見ていきます。

取得費の計算方法

1.減価償却とは

初めに減価償却について解説します。減価償却とは建物取得額を毎期一定の方法で計画的規則的に費用として配分し、建物取得額からその費用分を減額する会計上の手続きをいいます。
実際にお金が出ている費用ではなく、会計上の概念的な費用です。ポイントは、減価償却は土地については行われません。
建物取得費のみが毎年、減っていきます。

所得税の課税所得を計算するにあたっての、建物取得費は以下の計算式で計算されます。

建物取得費 = 建物購入代金 - 減価償却費
減価償却費 = 建物購入代金 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

償却率は用途と構造によって決まります。
自宅のマンションの場合、用途は非事業用となります。またマンションは鉄筋コンクリート造が多いです。鉄筋コンクリート造の償却率は0.015となります。

2.マンションの取得費計算

ここで、以下の条件でマンションの取得費を計算してみます。

【購入額】
マンション価格:5,000万円(建物価格:3,000万円、土地価格2,000万円)
売却時:築15年目

減価償却費 = 建物購入代金 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
= 3,000万円 × 0.9 × 0.015 × 15年
= 607.5万円

建物取得費 = 建物購入代金 - 減価償却費
= 3,000万円 - 607.5万円
= 2,392.5万円

取得費 = 建物取得費 + 土地取得費
= 2,392.5万円 + 2,000万円
= 4,392.5万円

ここで、今回マンションか3,500万円で売却できたとします。また譲渡費用は仲介手数料として111万円が発生したとします。
この場合、譲渡所得は以下の様に計算されます。

【譲渡所得】
譲渡所得 = 譲渡価格 - 取得費 - 譲渡費用
= 3,500万円 - 4,392.5万円 - 111万円
= ▲1,003.5万円 < 0円

この場合、譲渡所得がマイナスとなるため、所得税は発生しません。
マンションは、特に新築マンションでは人が住んだ瞬間にその価値が急速に下がり、さらに経過年数に応じて市場価値がどんどん下がります。一方で、マンションの減価償却費は70年かけて建物価格が減るだけなので、取得費はゆっくりと下がっていきます。
そのため、多くの方はマンションの売却によって譲渡損失が発生し、所得税は発生しない可能性が高くなります。

但し、話は「所得税が発生しない」だけでは終わりません。譲渡損失が発生すると、源泉徴収税額の還付を受けられる場合が有り、さらにお得な話が続きます。
そこで次に譲渡損失が発生した場合に使えるお得な特例についてご紹介します。

譲渡損失が発生する場合

1.居住用財産とは

初めに、この特例は個人が居住用財産を売却したときに利用できる制度です。
居住用財産とは、次の要件を満たす財産であり、自宅のマンションは居住用財産となります。

  1. 現に居住している建物及びその敷地
  2. 転居してから3年後の12月31日までに譲渡する物及びその敷地(この期間内に他人に賃貸をしていても対象となります。)

但し、以下の方に売却した場合は、居住用財産の売却の特例を使うことはできません。

  1. 配偶者、直系血族(親、子、孫など)生計を一にする親族、譲渡後にその家屋に居住する親族
  2. 本人、配偶者、直系血族や生計を一にする親族が主催している同族会社

マンションを売却して譲渡損失が発生した場合に使える特例は、1、居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例と2、居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の2つです。

これらの違いは、1は買換えを前提とし、2は買換えを前提としない点が異なります。
いずれも譲渡損失を他の所得と損益通算し、源泉徴収税額が還付される制度になります。

2.居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

買換えを行う場合、マンションを譲渡して譲渡損失が出た場合を考えます。
上述の例を再度用いると、以下のような状態です。

譲渡所得 = 譲渡価格 - 取得費 - 譲渡費用
= 3,500万円 - 4,392.5万円 - 111万円
= ▲1,003.5万円 < 0円

この場合、マンションの売却によって、1,003.5万円もの赤字が出たことになります。
例えば、売却した年の給与所得が800万円で源泉徴収税額が628,900円だったとします。その年は、居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を用いると、所得が以下の様に損益通算を行うことができます。

課税所得 = 給与所得 + 譲渡所得(赤字の譲渡損失)
= 800万円 - 1,003.5万円
= ▲203.5万円 < 0円

よってこの年は所得税がゼロとなり、源泉徴収税額628,900円が全額還付されることになります。
初年度で控除しきれなかった損失は、翌年と翌々年まで繰越すことが可能です。売却による譲渡損失が大きければ、3年間源泉徴収税額の還付を受け続けることも可能です。

3.居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

一方で、買換えを前提とせず、売却のみの場合も似たような特例があります。
それが「居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」です。この特例は、基本的な考え方は、買換えを前提とした損益通算及び繰越控除の特例と同じですが、損失の限度額が異なります。

買換えを前提とした損益通算及び繰越控除の特例では、「譲渡価格-取得費-譲渡費用」が損失の限度額でした。
それに対し、買換えを前提としない損益通算及び繰越控除の特例では、「譲渡価格-ローン残高」が損失の限度額となります。そのため、適用の要件にも譲渡に係る契約を締結した日の前日において、一定の借入金残高を有することが条件として加わります。

譲渡益が発生する場合

1.マンションが値上がりするようなケースとは

次にマンションを売却した時に譲渡益が発生する場合について見ていきます。
通常、建物は経過年数とともに、その市場価値を落としていきます。そのためマンションを売却した時に、購入時よりも高く売れるケースは、土地の価格が建物価格の下落以上に上昇しているときになります。

バブル時代には土地価格が毎年のように急上昇していたため、実際に、マンションが購入したときよりも高く売れるというケースがありました。また今でも希にマンション価格が購入時よりも値上がりするような場合が有ります。

例えば江東区の豊洲エリアなどは、以前はマンション価格があまり高くありませんでした。
今では街全体の再開発が進み、人気の商業施設等ができた結果、土地価格が大きく値上がりしました。そのため、再開発前に購入したマンションが、値上がりして売却できたというような事例もあります。
このようにバブル崩壊後であっても中古マンションが値上がりするようなケースは全くゼロではありません。

2.3,000万円特別控除を適用して譲渡所得がマイナスになる場合

ここで、譲渡益が発生した場合でも、税金を抑える特例が2つあります。1つ目に紹介するのは3,000万円の特別控除です。
居住用財産を売却した場合、3,000万円の特別控除を適用すると、譲渡所得は以下のようになります。

譲渡所得 = 譲渡価格 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円

例えば、譲渡価格が5,000万円、取得費が,500万円、譲渡費用が156万円だったとします。この際に、3,000万円の特別控除を適用すると、譲渡所得は以下のようになります。

譲渡所得 = 譲渡価格 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円
= 5,000万円 - 3,500万円 - 156万円 - 3,000万円
= ▲1,656万円 < 0円

この場合、譲渡所得がマイナスとなるため、所得税は発生しません。仮に3,000万円の特別控除が無かった場合、譲渡所得は1,344万円となり、所得税が発生するところでした。しかしながら、特例を適用することで譲渡所得がマイナスとなり、結果的に所得税は発生しないことになります。

実際、3,000万円の特別控除はかなり効果があります。
ファミリータイプのマンションであれば、新築でも3,000万円~8,000万円程度の価格帯が一般的です。3,000万円以上の利益が出るということは、これらの新築マンションが中古マンションになると、6,000万円~1億1千万円以上になるということです。
ここまでの値上がりは、少し現実離れしています。多くの場合、たとえマンションが値上がりしたとしても、3,000万円の特別控除を適用すれば、所得税は発生しないのです。

3.3,000万円の特別控除を適用しても譲渡所得がプラスになる場合

それでは、最後に3,000万円の特別控除を適用しても譲渡所得がプラスになる場合についてご紹介します。これは、マンションが相当値上がりをしているケースですが、これでも所得税を軽減してくれる特例があります。

それは「所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例」です。所得税は以下の計算式で計算されます。

所得税 = 譲渡所得 × 税率

3,000万円の特別控除は上式の譲渡所得を減額するための特例でした。3,000万円の特別控除を適用すると、ほとんどの場合、譲渡所得はマイナスとなると説明しましたが、ここでは3,000万円の特別控除を適用しても、なお譲渡所得がプラスになるケースを考えます。

この場合、「譲渡所得」は既に3,000万円の特別控除で減額しているため、次に下げるのは「税率」です。ここで紹介する特例は、所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合に「税率」が下がるという特例です。

不動産を譲渡した時の税率は、通常、以下のようになっています。

【所有期間が5年以下】
所得税率30%、住民税率9%
【所有期間が5年超】
所得税率15%、住民税率5%

ここで個人が、譲渡した年の1月1日において所有期間が10年を超える居住用財産を譲渡した場合は、税率が以下のように軽減されます。

【3,000万円特別控除後の譲渡所得のうち、6,000万円以下の部分】
所得税率10%、住民税率4%
【3,000万円特別控除後の譲渡所得のうち、6,000万円超の部分】
所得税率15%、住民税率5%

3,000万円を控除して、マンションで6,000万円超の譲渡益があるのは、通常、考えられないため、ほとんどのケースでは所得税と住民税の合計税率は20%から14%に軽減されます。

まとめ

以上、マンションを売却したときの税金の有無と利用できる各種特例についてご紹介いたしました。
マンション売却による税金は、バブル時代以前を背景として作られたため、譲渡益が発生すれば所得税がかかる制度はいまだに残っています。但し、制度こそ残っていますが、現在は納税を心配するよりは、源泉徴収税額の還付を期待すべき時代です。
マンションを売却した際は、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を利用し、源泉徴収税額還付を受けるのが良いでしょう。

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